第5話 おうちレストラン・トモコズキッチン 後編

放浪の料理教室講師
アケミ先生 小田原ガスの立ち上げをされる前は何をされていたんですか?先ほど、「前職を辞めようと考えていた時に、小田原ガスに足を踏み入れた」っておっしゃっていましたが。

トモコ先生 最初から話すと長くなるんですが…

アケミ先生 では、先生の経歴を時系列にお話しください。デザインの仕事とか、写真を仕事にしていた、とか…興味深いです!

トモコ先生 結婚前はオーディオメーカー会社に在籍していました。そこでデザインや写真の仕事をしていたんです。

アケミ先生 なるほど!先生の撮影写真が素敵なのは、その時の経験からなのですね。

トモコ先生 父が設計の仕事をしていた関係でデザイン学校を出ています。

アケミ先生 芸術家系ですね。そこからどのような経緯で料理の道に入ったのでしょう。

トモコ先生 結婚後、懐石料理を習っていたことから料理教室講師になったんです。体操教室で知り合った方が懐石料理を教えていて…それをどうしても習いたくなったんです。そして、10年ほど通って、本家よりお免状もいただきました。講師になったのは、その後ですね。

アケミ先生 懐石料理のお免状…憧れです。懐石料理は何流でしたっけ(汗)

トモコ先生 近茶(きんさ)流です。

※江戸懐石近茶流…江戸時代、文化文政の頃に興ったといわれている柳原家家伝の料理道。江戸爛熟期の文化を背景としたいろいろな料理の技法が伝わっている。

アケミ先生 懐石料理を習われたのに、洋食の先生なのは理由があるのですか?

トモコ先生 その後、ABCクッキングスタジオに勤めたので、広く浅く何でも教えていたせいですかね。でも、私は面白いと思うことは何でもやりたいので、和食だけでなく、イタリア料理もスペイン料理もお教えします。フードコーディネーターのスクールにも通いました。

アケミ先生 プロフィールに書いてある祐成先生のですね。私もワンデーで習ったことがあります。トモコ先生は、写真撮影もスタイリングも学ばれて…何でもおできになるのですね!

※祐成陽子クッキングアートセミナー…フードコーディネーター育成の老舗学校。

トモコ先生 撮影っていっても、今は携帯電話でもきれいに撮れますよ。

アケミ先生 わ~そうしたら、料理撮影のレッスンもできそうですね。


アケミ先生 懐石料理近茶流のお免状もらって、フードコーディネーターの学校に行って、すぐに先生になられたのですか?

トモコ先生 いえ、色々資格は取ったものの仕事はないだろうな、なんて思っていたんです。そんな時に、藤沢駅(神奈川県)でABCクッキングスタジオ講師の募集広告を見て。応募したら入っちゃったんです。

アケミ先生 入っちゃったんです、って、先生の経歴だったら絶対入れます(笑)それが20年前なのですね。ABCクッキングスタジオが流行る前ですね。

トモコ先生 はい、でも、配属先が遠くて通勤時間長くて、体力的に難しくて…それで、辞める決意をした時に…

アケミ先生 あ、そこで小田原ガスとの出会いですね!デザイン力あって、ABCで教えていらして、しかも、近茶流習っていて、フードコーディネーターで…それは小田原ガスに採用されて当然ですね!なんていう人生の流れ!感動です!(興奮気味w) 

トモコ先生 その後、小田原ガスの料理教室で、月に12クラス受け持ち、10年間ほど、毎月150名ほどの生徒さんにお教えしていました。そして、2016年に独立したんです。

アケミ先生 ABCクッキングスタジオが3年、小田原ガス11年…先生の講師歴は長いのですね。その後はどのような活動をされていたのでしょうか。

トモコ先生 独立後は、クックパッドのフランチャイズ料理教室「クックパッド城山教室」の講師になりました。

アケミ先生 クックパッドの料理教室があったのですね。知りませんでした。

トモコ先生 今はありませんけどね。当時、認定講師の審査を通過しないと開業できなかったくらい厳しかったんです。その城山教室は、こちらのカフェとなります。

アケミ先生 カフェともお付き合いが長いのですね。では、今現在の活動拠点は、いくつかあるということですね。

トモコ先生 放浪料理講師です(笑)鹿児島県の種子島まで行ってレッスンしたこともあります。20~30名集まった記憶があります。

アケミ先生 ええ~!それはすごい!ずいぶんと遠方からオファーがあったのですね。

※トモコズキッチン開催地(2023年2月現在)
①小田原ガスショールーム 
②宮小路オールド(デモンストレーションのみ)
③城山カフェBoss
④オンラインレッスン

アケミ先生 現在、募集されているレッスンを教えてください。

トモコ先生 宮小路オールドは、月に一回決まった曜日に開催していますが、直近ですと、小田原ガスショールームでの定例レッスンとなります。

料理はエンターテイメント、遊び心を忘れないように

アケミ先生 私も男性クラス持っていますが、先生も持たれていますよね。「親父の厨房」でしたっけ?かっこいいネーミングですよね!レギュラーメンバーは何名ほどいらっしゃるんですか?

トモコ先生 以前のショールーム時代は24名いた生徒さんが今は8名です。皆さんとは、付き合いが長いです。会社は退職されていますが、企業戦士だった方たちなんです。だから、けっこうシビアですよ。

アケミ先生 シビアって…?

トモコ先生 例えば、10年も教えていると、メニューがかぶることもあるのですが、「それ、やったよ」と指摘されちゃうんです(笑)

アケミ先生 なるほど、なかなかの記憶力ですね(笑)我々の方が忘れちゃっていますよ。私もあるあるです。

トモコ先生 そう言われても負けずに「やったことあるけど、作り方覚えていないですよね?」って返してます(笑)

アケミ先生 あはは。

トモコ先生 あとね、私がブロッコリーとカリフラワーをうっかり言い間違えるとすぐ指摘するし(笑)

アケミ先生 うーん、シビア~。ホント、容赦ないですね(笑)うちの男性生徒さんも似たような感じです。そこが男性の可愛さというか、なんというか~…私はそんな男性生徒さんが好きです(笑)ところで、皆様、家でも作られるんでしょうかね?

トモコ先生 食べるだけの人もいますが、もちろん、作る人もいます。グループLINEで写真載せてくれますよ。みなさん、退職後に何か必要っていうので料理を始められた感じです。

アケミ先生 企業戦士だった70代男性料理っていうのがカッコイイな。でも、要は、どれだけ自分の味が好きになるか?ってところですよね。

トモコ先生 それです。技術があれば何でもできますよ。工夫次第で楽しめると思うんです。

アケミ先生 あ、それ!トモコ先生のコンセプト!インタビュー事前アンケートにそう書いてありました。

トモコ先生 え、なんでしたっけ?(笑)

アケミ先生 先生が書いたことですよ~(笑)えっと…(アンケート確認)「料理はエンターテイメント、遊び心を忘れないように」。盛り付けを工夫するってことですか?

トモコ先生 色々な意味があります。もちろん、プレゼン(盛り付け)もそうですが、作っている過程を楽しむってところが一つのエンターテイメントと思うんです。あ~楽しかった!っていうイベント性を持たせたいんです。私自身も楽しむけれど、主役はもちろん生徒さんです。

アケミ先生 工夫としてはどんなイベント性を持たせますか?会話とか?

トモコ先生 そうですね。料理は楽しまないとね!真面目に習うって姿勢もよいのだけれど、料理は生活の一部ですから作ることを楽しまないと!って思います。

アケミ先生 いいですね~。そういったご年齢の男性が楽しめる場があるというのは。「親父の厨房」の生徒の皆様は、コロナでレッスンお休みの時寂しかったでしょうね。

トモコ先生 そうですね~。コロナ禍で一時、クラスを分けていたんですが、広いショールームでも再開したので、元の人数でできるようになって喜んでくださっています。「親父の厨房クラス」はお月謝制なのですが、皆さんが、月に一度の楽しみにしてくれているのは、私にとってうれしいことです。

アケミ先生 お月謝制の月一大人男性レッスン!いいですね~

トモコ先生 親父の厨房レッスンは、一年分のスケジュールを出してほしいというリクエストなんです。たしかに、日にち決めておくっていうのは大事だと思うんです。親父の厨房クラスだけでなく、女性の生徒さんもパートタイムされている方がいますし、レッスンのためのお休みをもらったり…それぞれに都合があると思うので、レッスン日は固定にしなければいけないと思っています。というか、その方が親切と思います。

アケミ先生 今後のレッスンはどんな展開になりそうですか?

トモコ先生 バスク料理!これ、はまってしまったんですよね~。バスク料理ってテーマで開催した小皿料理レッスンがおもしろくて。自分流に、作りやすくアレンジしたものをやったのですが、とても楽しいレッスンでした。今年の目標は、バスク料理レッスン!


アケミ先生 そういえば、いつだったかレッスンでレバーのパスタやっていましたよね?それもスペイン料理?

トモコ先生 あ、それは、バスクではなくイタリア料理です。夫がイタリアで工業デザイナーやっていたんですが、彼は料理が上手で。「肝のパスタ」っていつも言っていたんですが、ものすごく美味しかったんです。で、それを再現してみました。スペイン料理は、イベリコ豚のレッスンはしましたよ。

アケミ先生 あ、そのレッスン、マイキッチンの生徒募集のページで見ました!イベリコ豚でなくても普通の豚肉でもできますよ~って書いてあったレッスンですね!イベリコ豚って薄切りは見かけますけど、塊肉の手配はたいへんそう。

トモコ先生 しかも、頬肉だったんです。

アケミ先生 頬肉!それは探すの大変でしたね(汗)

トモコ先生 はい、普通に売っていないので、インターネットで取り寄せました。

アケミ先生 料理教室は、食材手配に苦労しますよね…でも、生徒さんのためならえんやこら(笑)


アケミ先生 親父の厨房でもバスク料理やるのでしょうか?おしゃれな小皿料理って男性が好きそうですね。

トモコ先生 男性のレッスンは、家庭料理を教えるというより、「おしゃれなグルメ時間」を過ごしていただこう、というのを意識して始めたんです。

アケミ先生 トモコ先生は、男性生徒さん担当でご活躍!私も自分のメンズクラスで…あ、おじクラスとも言んですけどね(笑)、知らなかった男性の素敵な一面が見られるので、おじクラスはお気に入りです(笑)

トモコ先生 以前は、横浜のランドマークタワーでも男性クラスやっていたんですよ。でも地元から遠いと、ご年配の方はなかなか参加できないみたいです。

アケミ先生 そういった方々を集めたいですね!「男性専門の料理教室!余暇は料理で楽しみましょう!」そういうプロジェクトをやってみたいですね。

トモコ先生 いいですね!自治体に相談すれば、そういうイベントが可能かもしれませんね。

アケミ先生 いつかやりましょう!


以上、対談終了。

 この後、予定通り、パティシエ宮本君の作ったレモンタルトを堪能し、無事終了。帰りはトモコ先生に教えていただいた小田原駅直結の小田原新城下町ミナカの広場や土産店を散策し、小田急線ロマンスカー乗車(行きは普通電車だったので帰りは遠足気分w)。ロマンスカーに乗り込むと「プシュッ…」という音があちこちから連続で耳に入った。勤務後のお父さんたちかな。心の中で「おつかれナマです…」、とつぶやきつつ笑顔が出た。ふむふむ…世の働くお父さんたちの余暇のための料理教室…いいかも。レッスン終えたら「おつかれナマです!乾杯!」なーんて、色々構想広がり楽しくなっちゃう。
 私はプシュは我慢して、ロマンスカー内で録音を確かめた。改めて、トモコ先生の情報を確認したら「生徒さんの知らないこと」という話題が出てくる、出てくる!それを文章にするのは私なので、わくわくしてしまう。
 ハロー!ティーチャーは、皆様の知らない先生の魅力を伝える目的があるんです。この記事を読まれて、トモコ先生にご興味を持たれた生徒さん!小田原までぜひ足をお運びください。都心の方でしたら、私のようにロマンスカーで行くのもよし、ちょっと旅気分で新幹線で行かれるのもよし。帰りに温泉や足湯も楽しめます。遠出プラス楽しいレッスンで余暇を充実させてくださいね。

取材先:おうちレストラン・トモコズキッチン

取材後記
今回、日帰り出張ということで(出張の定義確認済!笑)いつもより浮足立って出かけたが、案の定、いきなり生い立ちの話で盛り上がり、友達か?ってくらい雑談が多め。対談には書いていないが、経営の話、オンラインレッスン動画撮影の苦労話、年齢的あるある悩み(眼精疲労とか(笑))など…カフェの営業時間がどうとか言っていたわりに、ほ~ら、やっぱりね…って余計な話ばかり。でも、お友達のようなインタビュアーって面白いんじゃないの?ラフに先生の奥底の話が引き出せるんじゃないの?などと、勝手に良き自己評価しておるインタビュアー。今回は、3時間ちょっとの録音時間(カフェの閉店時間ギリギリまで粘った)。さて、録音記録は、東京の街を闊歩しながらイヤホンで聴くことにしている。「録音聴きたいから、今日は電車乗らず駅から歩いて帰ろう」って気持ちになるのだよね。今回も、寒い冬の道、耳に響く二人の講師の声。不思議なエネルギー湧いてきて「いい原稿仕上げられそう!」って、根拠のありそうななさそうな自信に満ちてくるのだ。それは、魅力的な先生たちのおかげである。素敵な先生の素敵なエピソードを伝えられる喜び。いつも興味深いお話をありがとうございます。

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取材・撮影・文
Class A's Kitchen
中尾明美